A5:新築では問題ありませんが、リフォームでの制震部材の使用は危険です。もし、制震部材を勧められたら、技術力のある事業者であることを確認することと、現行の建築基準法で求められている壁の量を満たした上での制震部材による補強をお勧めします。
住宅の耐震補強では「耐震」が最も一般的ですが、最近は「免震」や「制震」といった技術もどんどん出てきています。「免震」の構造にするには、建物の基礎の段階から検討・工事しなくてはいけないので主に新築で旅人されていますが、リフォームには不向きです。また、ここ数年「制震」という新しい技術が出始めました。建物に入力される地震力を制震部材で抑制しようという補強方法です。しっかりとした計算に基づいて、制震部材の設置位置、設置量などが決められ、非常に有効な補強方法なのですが、大きな危険もはらんでいます。
新築で「制震」部材を導入しているハウスメーカーなどもありますが、新築の場合は、現在の建築基準法どおり、もしくは、それ以上の性能が確保された上に副賞部材を設置するので、その構造性能は建築基準法が最低限担保してくれます。しかし、リフォーム時には建築基準法どおりに設計されているかという建築確認は必要ないため、その構造面の性能の担保は事業者の技術力に依存することになります。制震部材をリフォームで使用する場合は、「壁の量は現行の基準法どおりに増やして、その上で制震部材を利用しましょう」という提案にはなりにくくなります。
基準法どおりにすれば本当は100の量の壁が必要なのに「この制震部材を設置すれば壁の量が80でよい」という提案が必然的に多くなります。これが危険なのです。しっかりとした計算に基づき性能が発揮されれば問題ないのですが、その技術がない事業者が設計・施工した場合、期待していた財力100という性能が発揮できず被害を受ける可能性が大きくなるのです。
耐震補強は壁を増やせば基本的な住宅の強さは増大するので、かけたコストに対してその安全性が担保されやすいのですが、制震部材はその事業者の技術力に大きく依存するため、危険側に作用してしまう恐れがあるということなのです。
制震部材を検討するには限界耐力計算という複雑な計算を伴って補強箇所や補強する量などを検討しなくてはならないのですが、多くのリフォーム会社や工務店はこの計算がほとんどできません。設計事務所ですら多くの事務所がこの計算ができないのが実情です。もし制震部材を勧められたのであれば、技術力のある事業者であることをしっかり確認するか、現行の建築基準法で求められている壁の量を満たした上での制震部材による補強をお勤めします。
出所:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合著、書籍「地震でも安心な家」より